マリーゴールド(Tagetes spp.)は、鮮やかな花色と丈夫な性質で人気の高い一年草です。
しかし、どんなに日当たりが良くても、土壌のpH(酸性度・アルカリ度)が適していなければ、生育不良や葉の黄化などのトラブルを招くことがあります。
この記事では、マリーゴールドを健やかに育てるために重要な「土壌pH」について、適正値・影響・調整法・測定ポイントまで、詳しく解説します。
目次
マリーゴールドとキンセンカ(カレンデュラ)の違い
まず混同されやすいのが「マリーゴールド」と「キンセンカ(カレンデュラ)」です。
- マリーゴールド(Tagetes属)
フレンチマリーゴールド(T. patula)、アフリカンマリーゴールド(T. erecta)などを含む。日本の園芸で一般的に「マリーゴールド」と呼ばれるのはこちら。 - キンセンカ/カレンデュラ(Calendula officinalis)
別属の植物で「ポットマリーゴールド」とも呼ばれますが、Tagetes属とは異なります。
本記事では、Tagetes属(フレンチ/アフリカンマリーゴールド)を対象に説明します。
理想的な土壌pH範囲
マリーゴールドは、pH6.0〜7.0 の範囲で最もよく育ちます。
7.5程度までは耐えますが、それを超えると栄養吸収に支障をきたすことがあります。
| pH範囲 | 状態 | 植物への影響 |
|---|---|---|
| 5.5〜6.5(やや酸性) | 理想的 | 鉄・マンガン・亜鉛などの微量要素を効率的に吸収。根の発達が良好。 |
| 6.5〜7.0(中性付近) | 良好 | カルシウム・マグネシウム・カリウムなどの吸収が安定。 |
| >7.0〜7.5(弱アルカリ性) | 許容範囲 | 微量要素(Fe・Mn・Zn)が不足しやすく、葉の黄化に注意。 |
| <5.5(酸性過多) | 不適 | 鉄・マンガン過剰による毒性や根障害が起こる可能性。 |
pHが適正範囲を外れた場合のトラブル
酸性土壌(pH < 5.5)
- 鉄(Fe)やマンガン(Mn)が過剰になり、根にダメージを与える。
- 葉にブロンズ色の斑点が出る「マンガン毒性」が発生することも。
- カルシウムやマグネシウムの吸収が阻害される。
アルカリ性土壌(pH > 7.0〜7.5)
- 鉄・マンガン・亜鉛の吸収が阻害され、葉の黄化(クロロシス)が見られる。
- 特に若葉が黄緑〜黄色になりやすい。
土壌pHの調整方法
酸性化する方法(pHを下げたい場合)
- 元素硫黄(イオウ)
土壌中の微生物が硫酸塩に変換し、徐々に酸性化。即効性はなく、数週間〜数か月単位で効く。 - ピートモス
自然に酸性であるため、用土に混ぜると緩やかにpHを下げる。
アルカリ化する方法(pHを上げたい場合)
- 石灰(炭酸カルシウム)
一般的で安全。植え付け2週間前に土へ均一に混ぜ込み、再度pHを測定。 - 木灰(もくばい)
強いアルカリ性で、pHを素早く上げる効果があるが、カリウムや塩分が多いため過剰施用に注意。
酸性土でK欠乏がある場合にのみ、少量(目安10〜15ポンド/1000平方フィート以下)を施す。
土壌pHの測定と管理方法
測定手段
- pH試験キット:簡易的で手軽。目安を知りたいときに最適。
- 電子pHメーター:正確な測定が可能。頻繁に栽培を行う場合におすすめ。
測定タイミング
- 植え付け前
- 大きな施肥・改良のあと
- 酸性雨が多い地域では年1回程度のチェックを推奨。
注意点
- pH調整は急激に行わず、段階的に行う。
- 改良資材を混ぜた後は2〜3週間後に再測定し、変化を確認。
- 土壌の種類(砂質・ローム質・粘土質)により反応速度が異なることを考慮。
追肥とpHの関係
肥料にもpHを変化させる性質があります。
- 酸性肥料(硫酸アンモニウムなど) → 土壌を酸性化。
- アルカリ性肥料(硝酸カルシウムなど) → 土壌をアルカリ化。
施肥設計の段階で、pH調整資材と肥料の性質を組み合わせることが理想です。
まとめ:マリーゴールドを美しく育てるために
- 理想的な土壌pHは 6.0〜7.0。
- 酸性・アルカリ性に偏ると、微量要素の吸収不良や根障害を引き起こす。
- pH測定→調整→再測定のサイクルを年1〜2回行うことで、常に健康な環境を維持できる。
- 植え付け前に土壌をテストし、必要なら硫黄や石灰でpHを整える。
土壌pHを意識するだけで、マリーゴールドはより色鮮やかに、長く咲き続けてくれます。
ぜひ定期的なチェックを習慣化し、花壇やプランターを最高の状態に保ちましょう。
以上、マリーゴールドの土壌のpHについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
