日本の庭園を彩る代表的な花木といえば、「山茶花(サザンカ)」「牡丹(ボタン)」「椿(ツバキ)」が挙げられます。
どれも華やかで美しい花を咲かせますが、実は開花時期や花びらの形、香り、葉の特徴などに明確な違いがあります。
ここでは、それぞれの植物の特徴を詳しく解説し、最後に三者の違いをまとめて比較します。
山茶花(サザンカ)
学名・分類
- 学名:Camellia sasanqua
- 科:ツバキ科
- 原産地:日本(のちに中国などでも栽培)
- 分類:常緑低木
特徴
サザンカは日本原産のツバキ科の花木で、秋から冬の初めにかけて咲く「冬の花」として親しまれています。
花はやや平たい形で、花びらが一枚ずつ独立しており、咲いたあとも一枚ずつはらはらと散るのが特徴です。
花色は白、ピンク、紅などが多く、品種によっては淡い香りを持つものもあります。
葉は細長く光沢があり、縁には細かなギザギザ(鋸歯)が見られます。
ツバキに比べて葉がやや薄く、柔らかい印象です。
開花時期
10月から12月ごろにかけて開花し、秋から冬の庭を彩ります。
主な用途
サザンカは耐寒性に優れ、刈り込みにも強いため、生け垣や庭木として重宝されています。
また、花びらが一枚ずつ落ちる姿は「散り際の美」として古くから日本人に愛されてきました。
牡丹(ボタン)
学名・分類
- 学名:Paeonia suffruticosa(牡丹)
- 科:ボタン科
- 原産地:中国
- 分類:落葉低木(木本性)
※近縁種として「芍薬(シャクヤク)=Paeonia lactiflora」があり、こちらは草本性の多年草です。
牡丹と混同されがちですが、性質が異なります。
特徴
牡丹は「百花の王」と呼ばれるほど豪華で優雅な花を咲かせます。
花径が20cmを超える大輪の花をつけ、多くの花びらが幾重にも重なり、まるで絹を重ねたような華やかさがあります。
色は白、桃色、紅、紫、黄色など多彩で、香りの強い品種も多く存在します。
葉は大きく、深い切れ込みが入った形で、柔らかく薄いのが特徴です。秋には落葉します。
開花時期
主に春(4月〜5月)に咲きますが、品種によっては冬に咲く「寒牡丹」もあり、冬の庭を彩る貴重な花として知られています。
主な用途
牡丹は古くから観賞用として栽培され、寺院や日本庭園を象徴する花のひとつです。
その豪華な姿から、富貴・高貴・優雅さの象徴とされ、和の装飾や絵画の題材としても多く登場します。
椿(ツバキ)
学名・分類
- 学名:Camellia japonica
- 科:ツバキ科
- 原産地:日本、中国、韓国
- 分類:常緑低木
特徴
ツバキは、冬から早春にかけて咲く代表的な花木です。
花は厚みのある花びらがしっかりと重なり合い、丸みを帯びた形をしています。
赤や白、ピンクなどの花色が一般的で、一重咲きから八重咲きまで多様な品種があります。
葉は硬く厚みがあり、強い光沢を持つ楕円形。サザンカほど目立ちませんが、縁には細かな鋸歯があります。
咲き終わると花全体が「ポトリ」と落ちるのがツバキの特徴で、この静かな散り方は「侘び・寂び」を感じさせる日本的な美として好まれています。
開花時期
主に12月から3月にかけて開花します。
冬の雪の中でも凛として咲く姿は、古くから多くの人々に愛されてきました。
主な用途
ツバキは観賞用としてだけでなく、「椿油」としても有名です。
種子から採れる椿油は、髪や肌の保湿、美容、食用などに利用されてきました。
また、茶道や日本庭園にも欠かせない存在で、文化的価値の高い植物といえます。
山茶花・牡丹・椿の主な違い
| 特徴 | 山茶花(サザンカ) | 牡丹(ボタン) | 椿(ツバキ) |
|---|---|---|---|
| 科・属 | ツバキ科 | ボタン科 | ツバキ科 |
| 原産地 | 日本(中国でも栽培) | 中国 | 日本・中国・韓国 |
| 開花時期 | 秋~初冬(10〜12月) | 春(4〜5月)※寒牡丹は冬咲き | 冬~早春(12〜3月) |
| 花の大きさ | 中型(約5〜8cm) | 大型(約15〜20cm以上) | 中型(約5〜10cm) |
| 花びらの形 | 一枚一枚独立、平たい形 | 多層で豪華、重なり合う | 丸みを帯び、しっかり重なる |
| 香り | 甘く香る品種もある | 芳香の強い品種が多い | 基本的に無香 |
| 葉の特徴 | 薄く光沢あり、鋸歯が目立つ | 大きく切れ込みがある | 厚く硬く光沢あり、細かい鋸歯 |
| 花の散り方 | 花びらが一枚ずつ散る | 花びらが順に散る(落葉性) | 花全体がポトリと落ちる |
| 主な用途 | 庭木・生け垣 | 観賞用・庭園・寺院の象徴 | 茶道・庭園・椿油など |
まとめ
サザンカ・牡丹・ツバキはいずれも日本文化に深く根付いた美しい花木ですが、それぞれの開花時期や姿、性質にははっきりとした違いがあります。
- サザンカ:秋から冬の初めに咲き、花びらが一枚ずつ舞い落ちる繊細な美しさ。
- 牡丹:春に咲く「百花の王」。大輪の華やかさと芳香を兼ね備えた落葉低木。
- ツバキ:冬から早春に咲き、花全体が静かに落ちる侘びの花。日本庭園や茶道文化に欠かせない存在。
それぞれの特徴を理解すれば、四季折々の花をより深く楽しみ、庭づくりや鑑賞の幅を広げることができるでしょう。
以上、山茶花と牡丹と椿の違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
